American Sniper 2014, アメリカ 監督 クリント・イーストウッド |
圧倒されてしまった。脚が鉛のように重く、心の整理がつかないままエンドロールが終わる…そんな映画体験は初めてだった。無音のエンドロールをただ呆然と見つめながら、その終わりを見届けたときに、ああ席を立たなければ、と力を振り絞って立ち上がった。言葉を発する気にもなれず、また安易に何か感想を言ってしまうことで心の中の感情の波が一瞬でどこかに消え去ってしまいそうで恐ろしかった。それくらい繊細な映画だった。
戦争は肉体だけでなく心も破壊する。心の傷は目に見えないので余計に厄介で、その苦しみが癒えないまま帰国後ももがいている人がどれだけ存在するんだろう…その見えない苦しみによる結末が余りにも重い。
戦地で命を落とした兵士たちの葬儀での、いくつも棺に打ち付けられる勲章、綺麗に折りたたまれた国旗、弔砲。それらが残された家族の何になるというのだろうと虚しくなった。勿論それらを否定するわけではないけれど、彼らが命を落とさねばならなかった原因というのが、無くなることはないのだろうか…と考えずにはいられなかった。何のためにたくさんの命が失われて、たくさんの人の心が傷つけられているのだろうか。そしてそれらは確実に今も起きている現実なのだ。こんなものは映画のなかだけで充分だ、と何度も何度も思った。