2015/09/18

ラブストーリーズ コナーの涙 / エリナーの愛情

The disappearance of Eleanor Rigby
2013(2015), アメリカ
監督 ネッド・ベンソン


1つのお話を2人の視点から別々の映画として作る…っていうアイディアをちゃんと活かして作られてて感心してしまった。同じシーンでも視点によって微妙にセリフや行動が違っていて、別の印象を受ける。これを私たちは普段無意識のうちにしているから、気持ちにすれ違いが生まれたりするんだろうなあ。お互いに同じ瞬間を共有していても、感じ方が違うのだから、まったく同じものを見るなんてことは不可能なんだ。

これって別に恋愛だけにすぎなくって、映画でもなんでもそうだよなと思った。
だからこの作品を見て記憶に強く残ってるシーンも、何を感じたかも人によって全く違う。
当たり前のことなのに、なんかすごく面白いね。

オススメしていた人が多かったということもあり、Him(コナーの涙)→Her(エリナーの愛情)の順で鑑賞。言われている通りこれはどちらを先に見るかで評価が変わりそう。

どちらか1本でも完結するのかもしれないけれど、私はやっぱり2本見てこそ、だと思いました。コナーとエリナーでまったく毛色の違う映画なので、同じ話を2回観た、っていう感じではないから、立て続けに見ても全然苦じゃない。


Himではエリナーはどちらかというと"何を考えているか分からない女"感が強い。タイトル通り突然コナーとの生活から"失踪"してしまった。理由の分からないコナーはひたすらに彼女を取り戻そうともがくんだけれど、彼女は「時間はあげたはず」というばかりで、コナーの元へは戻ろうとしない。

私の友人が、コナーだけ観たときは「自己中心的な女としか思えなかった。」と言っていて。確かにそれも分かるんだけど、私はそうは思えなくて。というかエリナーが自分と一緒の考え方のような気がしていた。

全く彼女たちと同じ状況ではないけれど、恋人との関係において、現状のままではいられない、何か決断をしなければいけないと悩んでいる自分にとって、エリナーの悩みは他人事に思えなかった。

だから、Herで彼女の心を知りたくてたまらなかったし、そして少し怖くもあった。
Himで自分と重ねて見ていたけれど、もし全く違ったら?期待外れな作品だったら??
私は人生のヒントを映画に求めすぎてるのは分かってるんだけど、それでも彼女の決断が何か私の問題をも解決してくれるような気がして。縋りたくなった。



Herで描かれるエリナーは、もちろん100%私の考えた通り、ではないけれど、少なくとも私を落胆させるような女性ではなくって、安心した。

Herは少し衝撃的な場面から始まる。けれどあの行動によって、彼女はそれまでの自分を殺して、新しく生まれ変わったのだとおもう。完全にではないし、心の傷を少しの間だけ封じこめているだけかもしれないけれど、それでも確実に彼女に変化は起こり、前に進めた。

コナーの事は愛しているし、出来る事ならば2人でやり直したい。でも、今は出来そうにない。一日中ベッドに横になって、こんな気持ちのまま毎日を亡霊みたいに過ごすのには耐えられない。何かを変えなければ。人生を取り戻さなくちゃ。

そんな風に彼女が思ったのかは分からないけれど。

エリナーがコナーの元を離れた理由は、Herでの妹との会話の中で明かされる。でもたぶん勿論あれだけが理由じゃないのであろうことはエリナーが一番よく分かってるんだろうなあ。コナーのあの行動はあくまでキッカケにすぎない。些細だけれど、彼女には耐え難かった。一緒に居るけれど、同じ感情を共有はしていないもどかしさ。一番近くに居るのに、誰よりも遠い存在のように感じる辛さ。それが彼女を深く傷つけた。

同じシーンにおいて、エリナーが妹に「心を読んでくれない?」って問いかけるんだけど、私的にはその一言にすべてが詰まっているような気がした。その一言は私の気持ちそのものでもあった。

自分の思っていることをすべて理解して貰えたらいいのに。
ぐちゃぐちゃで整理も出来ていない心は、そのまま覗いて貰えれば伝わるのに。

一人で悲しみと戦っていた(ように感じていただけで、もちろんコナーも同じく戦っていたんだとは思う)彼女が出会う、フリードマン教授が凄く良かった…
彼女にとっての一番の支えになったのは教授の存在だと思う。
毎回きっと会話していた時間はすごく長くはなくて、でもその短い時間の中でお互いの気持ちを十分に共有し会えてる感じ。そういう関係って理想だよなあ。

もちろん気持ちなんて言葉にしなければ伝わらないことはわかっているんだけどさ。言語化できないモヤモヤを、どう伝えたらいいのか、ってときに、同じような価値観や空気を持っている人の存在ってすごく大きいと思う。



車内でコナーが浮気を告白するシーンは、どっちが本当なんだろう?
見てから時間が経ってしまったのでちょっと間違ってるかも知れないけれど、Himでは余裕があるように見えたエリナー、Herだと普通にショックを受けていなかったっけ。
ここらへんとかも含め、また何度か見返して違いを確かめたいし、誰かと語り合いたいなあ。
正直私は仮に自分が言ったことだとしても本当に浮気されたらショックだなあ笑

どちらも2人が恋人同士の頃の、全てがキラキラと輝いているようなシーンが回想として入ってくるんだけど、現在との違いが切ない。でもブルー・バレンタインほど心に深手を負うわけじゃないからよかったかな笑

エリナーの名前がビートルズの曲名と同じなので何か意味があるのかな?と見る前から思っていたんだけれど、そしてそれがHerで明かされるんだけど…あんまり関係なくって拍子抜けした。
いや考察とかしようと思えばできるのかもしれないけど。でもあの曲の歌詞って切なすぎるからこの映画と重ねたくないな…重ねてしまうと余計辛いような。


残念ながらレンタルも劇場公開もHer&Himのみで、その2本を一本にまとめたThemを日本語字幕付きで見るには現状ソフトを買うしかない。

Them見たいし、エリナー編好きだから、ちょっと欲しいなあ。
でもお金がないからしばらく先のことになりそうだ。

というわけで好みで行くと エリナーの愛情>コナーの涙 って感じでした。

でも正直エリナーの涙、コナーの愛情の方がしっくりくる気がするなあ。Himでのコナーってすごく愛に溢れているように見えたよ。